迷える羊 アラサー男の人生計画

29歳から始める人生設計

西加奈子の『通天閣』を読んでみて思ったこと ※ネタバレあり

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元カノは大阪の子で遠距離恋愛だった。

 

彼女が東京に遊びにきている時に相席居酒屋で出会って付き合うようになった。

相席屋で出会ったと言うのが恥ずかしく、周囲には飲み屋で意気投合したと

嘘をついていた。

 

元カノと付き合うまでは大阪という街には一切関わりがなかった。

あまり興味も無かったし、行きたいとも思わなかった。

 

でんがな、まんがな言ってるおっちゃんと、ヒョウ柄の服きたおばちゃんの

イメージしかなかった。

 

ごめんなさい。
完全なる偏見だ。

 

実際、大阪はすごくいい街だ。
僕は大阪を好きになった。

 

万博記念公園海遊館USJも道頓堀もなんばグランド花月も行った。

だいたい主要な所はデートで行ったのに、行かなかったが場所が2つある。

通天閣あべのハルカスだ。

あべのハルカスはいつか行こうねと話していた。

でも通天閣だけはそんな話しも出なかった。

 

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先日暇になって、久しぶりに本を読もうと思った。

ただ読みたい作品も特になく、作家にも疎いので誰の何を読もうか迷っていた。

 

そこで思い出したのが、アメトーーク!の読書芸人だ。

ピースの又吉やオードリーの若林がお勧め作家に上げていたのが西加奈子

 

なぜか唯一、西加奈子だけ覚えていた。

 

この人がどんな作風なのかも良くわからないけど、

取りあえず本屋に行って買ってみることにした。

 

5、6作品くらい置いてあっただろうか。

 

どれを読もうか迷った挙句、手に取ったのが『通天閣』だ。

 

振られた傷も癒えない時になぜこの作品をとったのか、自分でもわからない。

 

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通天閣』のあらすじはこうだ。

主人公は2人。

 

1人は工場で働く40代の男。かつては子持ちの女性と結婚もしたことが

あったが、その娘を愛することができなくて、それが今でも心に

しこりを残していた。

 

男は何か希望や夢があるわけでなく日々淡々と生きている。
生きているというよりは、日々をこなしているのだ。

 

もう1人はスナックで働く20代の女の子。
スナックで働く人は皆、変わった者ばかりだ。
そんな変わり者を相手にしながら、大きな夢や希望もなく、

ただ日々を生きている。

 

この2人の日常が交互に描かれ、通天閣で起こったある事件で2人が少しだけ
交わるという話しである。

 

僕はこの女主人公(雪ちゃん)に自分を重ねた。

 

彼女は2年間同棲していたマメという彼氏がいた。
雪ちゃんはマメを中心とした生活を送っていた。

 

マメという彼ができてから、他の男には、目もくれなかった。

女友達との約束なんて、余裕でドタキャンしたし、合コンなんかに

行く人たちのことを、嘲り笑っていた。

己の幸せを喜び、必要最低限の人としか話をせず、マメのことだけを

見ていた。マメ、マメが生活が中心だった。

 

しかし、マメは自分の夢である映像作家を目指してNYへと単身旅立つ。

突然にだ。

 

しばらくは国際電話で連絡を取りあっていたが、次第にマメから連絡の頻度は減る。

そしてある日、マメから電話が来て別れを告げられてしまう。

好きな人ができたと。

相手は同じ夢を持つ、尊敬できる人らしい。

 

雪ちゃんは毒づく。

 

何を言いさらす。

頑張ってて、新しい映像を作れば、あんたは好きになるのか。

尻が大きくてそそるとか、セックスがうまそうだとか、甲斐甲斐しく身の回りの世話をしてくれるだとか、そういうことを言え。

頑張ってるときの目がキラキラしている?

本人より作品に惚れたと言ったほうが正しい?

じゃかましい!

夢に向かって頑張っていないと駄目なのか、何かを作っていないと駄目なのか。

自転車でバイト先に向かい、阿呆の相手をして、

マメのことを思って眠る生活をしている私は、駄目なのか。

「きらきらと輝いて」、いないのか。

 

相手に依存していればしている程、信用していればいる程、
振られた時のダメージは大きい。

 

振ったほうも傷ついてるだとか、苦しい思いをしているだとか言う奴が
いるがそんなことない。

振られたほうがしんどいに決まっている。

 

僕も元カノに振られた。

表向きは1人になりたいだの将来を考えられなくなっただの
もっともらしい理由を並べられたが、実は新しい相手がいたのだ。

 

そう、乗り換えられたのだ。

 

振った方は新しい相手と幸せな生活を送り、
振られたほうはただ絶望して、無味乾燥な生活を送る。

 

雪ちゃんはゲロを吐き、バイトをさぼった。
僕も色んな人に毒を吐き、仕事を適当にこなした。

 

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物語の終盤、通天閣で事件が起こる。
その事件に遭遇し、そこで見た光景に雪ちゃんは少しだけの希望を見い出す。

 

最後に雪ちゃんはこう言った。

 

全力で愛そう。

私の胸の奥の方で、通天閣に降る雪の一粒のように、小さな小さな、

でも、はっきりとした予感があった。

今度出会えたその人を全力で愛そう。できるはずだ。

 

振られれば傷つくかもしれないが、人として成長できると思う。

人の痛みがわかるからだ。

相手を疑ったり、駆け引きしたりしたくなる気持ちもあるかもしれない。

でもその先に幸せや良い結果はあるだろうか。

 

馬鹿みたいに相手を愛し、想うことはカッコ悪いことなんかない。

すごく素敵なことだと思う。

 

僕も次に出会った相手を全力で愛そう。

 

そしていつかの日か、笑顔で大阪に行ける時が来たら、
通天閣に登ってみよう。